デザイン原則やさしく解説

資料やSNSの色選びが変わる!『色のトーン』やさしく解説【非デザイナー向け】

Tags: デザイン原則, 非デザイナー, 配色, トーン, 資料作成, SNSデザイン, 色選び

「なんとなく」の色選びから卒業しませんか?デザインの『色のトーン』とは

SNS投稿や広告クリエイティブ、プレゼン資料など、日々の業務で色を選ぶ機会は多いと思います。会社のロゴカラー、使いたい写真の色味、伝えたいメッセージ...色を選ぶたびに、「これで良いのかな?」「なんかイメージと違うな」と迷うことはありませんか?

同じ「青」でも、空のように明るい青、海の底のような深い青、デニムのような少し色褪せた青など、様々な青があります。それぞれが与える印象は全く違いますよね。この「色の印象」を大きく左右するのが、『色のトーン』です。

色のトーンは、デザインの専門知識がない方でも理解すれば、色選びの幅がぐっと広がり、意図したメッセージや雰囲気を効果的に伝えることができるようになります。この記事では、非デザイナーのビジネスパーソン向けに、色のトーンを分かりやすく解説し、具体的なデザイン業務でどのように活かせるかをご紹介します。

色のトーンは『明るさ』と『鮮やかさ』で決まる

デザインの専門用語で「トーン(Tone)」とは、色の「明るさ」「鮮やかさ」を組み合わせた概念です。

色そのものの種類(赤、青、黄色など)を「色相(しきそう)」と呼びますが、同じ色相でも、白い絵の具を混ぜたように明るくしたり(これが明るさ)、黒い絵の具を混ぜたように暗くしたり、また、灰色の絵の具を混ぜたようにくすませたりすることができます。

この「明るさ(明度)」と「鮮やかさ(彩度)」の違いによって、色の雰囲気や印象が大きく変わるのです。

例えば、「赤」という色相でも、以下のようにトーンによって全く違う印象になります。

このように、色相が同じでも、トーンが変わるだけで全く違うメッセージや感情を伝える力を持つのが「色のトーン」の面白さであり、重要な点です。

なぜ色のトーンがデザインに重要なのか?

色のトーンがデザインにおいて重要視されるのは、主に以下の理由からです。

  1. 印象や感情のコントロール: デザインを見る人が最初に感じる印象は、色の影響が非常に大きいです。明るく鮮やかなトーンは活動的・楽しげな印象を与え、落ち着いたくすんだトーンは信頼感や安定感を与えます。ターゲット層や伝えたいメッセージに合わせてトーンを選ぶことで、意図した印象を正確に伝えることができます。

    • なぜ?: 人間の脳は、色を見る際にその「明るさ」や「鮮やかさ」から無意識的に様々な連想をします。例えば、明るい色は光やエネルギーと結びつけやすく、暗い色は影や落ち着きと結びつけやすいのです。
  2. デザイン全体の雰囲気づくり: 複数の色を使う場合でも、全体のトーンを揃えることでデザインに統一感が生まれます。例えば、パステル調の柔らかいトーンで揃えれば優しくかわいらしい雰囲気に、彩度が低く暗めのトーンで揃えればシックで大人っぽい雰囲気にすることができます。トーンがバラバラだと、デザイン全体がまとまりなく見えたり、チグハグな印象を与えてしまったりします。

    • なぜ?: 人間の目は、色相の違いよりも、色の「明るさ」や「鮮やかさ」が揃っているかどうかで、視覚的なまとまりやすさを判断しやすい傾向があります。トーンが揃っていると、要素間の関連性が感じられ、視覚的にスムーズに情報を処理できるため、デザイン全体が洗練されて見えます。
  3. 視認性と可読性への影響: 文字や要素の色を選ぶ際、背景色とのトーンの差(コントラスト)は非常に重要です。例えば、明るい背景に明るい文字を置くと読みにくくなります。適切なトーンの組み合わせを選ぶことで、情報をきちんと見やすく、読みやすくすることができます。

    • なぜ?: 明るさが近い色同士や、鮮やかさが近い色同士は、境界線がぼやけて見えやすいためです。特に文字の可読性においては、背景と文字の色相だけでなく、明るさの差が大きく影響します。

実践!非デザイナーのためのトーン活用ステップ

では、具体的にどのように色のトーンをデザインに活かせば良いのでしょうか。非デザイナーの方でもすぐに始められる簡単なステップをご紹介します。

ステップ1:伝えたい「印象」を言葉にする

まずは、そのデザインで何を伝えたいか、見る人にどんな気持ちになってほしいかを明確にしましょう。キーワードでリストアップするのがおすすめです。

例:

ステップ2:印象に合う「トーン」をイメージする

ステップ1で明確にした印象に合うトーンをイメージします。

一般的に、以下のような対応関係があります。

いくつかのトーン見本(インターネット検索で「色のトーン 一覧」などで検索すると、様々なトーン分類と見本画像が見つかります)を見ながら、イメージに近いトーンを探してみるのも良いでしょう。

ステップ3:選んだトーンを「揃える」ことを意識する

メインとなる色が決まったら、一緒に使う他の色も、できるだけ同じか近いトーンで選ぶことを意識します。

例:新サービス広告バナー ステップ1で「ワクワク」「最先端」「簡単」という印象を選んだとします。ステップ2で「明るく鮮やか」なトーンが良いと考えました。 メインカラーが鮮やかな青(例:スカイブルーを鮮やかにした色)なら、一緒に使う黄色や緑も、同じように鮮やかで明るいトーンのものを選ぶと、デザイン全体に統一感が生まれて「ワクワク」するような印象が強まります。もしここで、メインカラーは鮮やかな青なのに、一緒に使う色がくすんだ緑や暗い赤だと、全体としてチグハグな印象になってしまう可能性があります。

応用例:写真やイラストの色味も意識する SNS投稿や資料に写真やイラストを載せる場合、その素材自体の色味やトーンも、デザイン全体のトーンに合っているか確認しましょう。例えば、全体的にパステル調の優しいトーンでデザインを構成しているのに、写真だけ鮮やかすぎる色味だと浮いてしまうことがあります。写真編集ツールで少し彩度を調整したり、フィルターをかけたりすることで、デザイン全体のトーンに馴染ませることができます。

デザイナーとの連携に活かす

色のトーンの知識は、デザイナーにイメージを伝える際にも非常に役立ちます。

例えば、「青色を使ってほしいのですが、落ち着いた信頼感のあるイメージにしたいです。」と伝えるだけでなく、「青色のダルなトーンで、信頼感のある落ち着いたイメージにしたいです。」のように伝えることで、デザイナーはより具体的に色を選ぶことができます。

もちろん、専門的なトーン名称を知らなくても構いません。「パステルカラーのような明るくて優しいトーンで」「絵の具をそのまま使ったような鮮やかなトーンで」「少し灰色がかったような、落ち着いたトーンで」といったように、日常の言葉や比喩を使っても十分に伝わります。トーンを意識した言葉でコミュニケーションをとることで、よりスムーズに、イメージ通りのデザインを依頼しやすくなるでしょう。

まとめ

デザインにおける『色のトーン』は、色相(色の種類)に「明るさ(明度)」と「鮮やかさ(彩度)」の要素が加わったものです。トーンを理解し、コントロールすることで、デザインが与える印象や感情、雰囲気、そして視認性を意図通りに調整することができます。

今日から色を選ぶ際には、「この色は明るいかな?暗いかな?」「鮮やかかな?くすんでいるかな?」という視点を少し意識してみてください。そして、「このデザインで伝えたい印象は何だろう?その印象にはどんなトーンの色が合うだろう?」と考えてみましょう。

色のトーンを意識した色選びは、あなたの資料やSNS投稿を、もっと効果的に、もっと魅力的にするはずです。ぜひ試してみてください。