スルスル読ませる秘密!デザインの『連続(ゲシュタルト原則)』やさしく解説【非デザイナー向け】
デザインの世界には、人の目が無意識に「見やすい」「分かりやすい」と感じる法則がいくつか存在します。その中でも特に、情報の流れや視線の動きに関わる重要な原則の一つに、「連続(または連続性の法則)」と呼ばれるものがあります。
この原則は、「ゲシュタルト原則」と呼ばれる一連の知覚法則の一つです。ゲシュタルト原則は、人間がバラバラな要素を単なる点の集まりとしてではなく、意味のある一つのまとまりとして認識しようとする心の働きを説明するものです。今回は、その中でもデザインと深く関わる「連続」の原則に焦点を当て、非デザイナーの皆様にも日々の業務で活用いただけるよう、分かりやすく解説いたします。
デザインの『連続』の原則とは?
デザインにおける「連続」の原則とは、簡単に言うと、要素が特定の方向や線に沿って配置されていると、私たちの目は無意識のうちにその方向や線を追って、要素を一つのまとまりとして認識しようとする、という働きのことです。
例えば、まっすぐな道路の白線を見たとします。白線が途中で途切れていても、私たちはその線が同じ方向に続いているように感じ、自然と視線が奥へと誘導されます。デザインにおける「連続」の原則も、これと似た働きをします。
具体的には、以下のような要素が「連続性」を生み出します。
- 同じ方向を向いている要素: 例えば、複数の矢印や、同じ角度に傾いた写真などを並べると、それらが一つのグループに見え、矢印の先に視線が誘導されます。
- 滑らかに繋がる線や曲線: 要素を線や曲線で繋ぐと、その線に沿って視線が流れます。
- 連続して配置された要素: 同じ間隔やリズムで要素が並んでいると、それらが一つの流れとして認識されます。
これらの要素を使うことで、デザインを見た人の視線を意図した方向へ自然に誘導し、情報の流れをスムーズにすることができるのです。
なぜデザインに『連続』の原則が大切なのか?
『連続』の原則を意識することは、以下のような点で非常に重要です。
- 視線をスムーズに誘導できる: 読者がどこから見て、次にどこへ視線を移せば良いかが明確になります。これにより、伝えたい情報を効率的に読者に届けることができます。資料や広告で「まずこれを見て、次にこれ、最後にここ」というように、順序立てて情報を理解してもらうために役立ちます。
- 情報の流れや構造を分かりやすく示す: プロセスやステップ、関連性などを視覚的に表現する際に、『連続』の原則を活用することで、複雑な情報でも直感的に理解しやすくなります。フロー図やタイムラインなどが良い例です。
- デザインに統一感とリズムを生み出す: 要素が連続的に配置されていると、全体にまとまりが生まれ、視覚的なリズム感が生まれます。これにより、洗練されたプロフェッショナルな印象を与えることができます。
- 飽きさせずに最後まで読ませる: 視線がスムーズに流れるデザインは、読者にとってストレスが少なく、次に何が来るのだろうと自然と目で追ってしまいます。これにより、伝えたいメッセージを最後まで読んでもらいやすくなります。
日々の業務で『連続』の原則をどう活かすか?(具体的な適用例)
それでは、SNS投稿、プレゼン資料、広告バナーなど、非デザイナーの皆様が日常的に作成・ディレクションするシーンで、『連続』の原則をどのように活用できるか、具体的な例を見ていきましょう。
例1:SNS投稿やバナーでストーリーを順序立てて伝える
複数の画像やテキストで構成されるSNSのカルーセル投稿や、複数の情報を盛り込むバナー広告などで有効です。
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適用方法:
- 各ステップや情報を表す要素(画像、テキストブロック、アイコンなど)を、ゆるやかな曲線や斜めのラインに沿って配置してみましょう。
- 各要素の間に、情報を繋ぐような矢印や短い線を加えることで、視線の流れをより明確にできます。
- 要素のサイズや形状、色などに段階的な変化をつける(例:情報が重要になるにつれて要素を大きくする)ことで、連続性にリズムが生まれます。
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なぜ良いのか: 要素が一直線に並んでいるだけでなく、視線が自然な曲線や斜めに沿って流れることで、単調さを避けつつ、ストーリーやステップを追体験しているかのような感覚を生み出します。読者は次に何が来るかを予測しやすくなり、スムーズに情報を理解できます。
例2:プレゼン資料や社内資料でプロセスや関係性を示す
特に、手順説明や組織図、因果関係などを図解するページで活用できます。
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適用方法:
- 手順やステップを示す図形(四角や丸など)を配置する際に、単に縦や横に並べるだけでなく、少し斜めにずらしたり、ゆるやかな階段状に配置したりします。
- それぞれの図形を、同じ種類の矢印(例:一貫した太さ、色、先端の形)で繋ぎます。矢印の向きを明確にし、スムーズな曲線や直線で結ぶことが重要です。
- 関連する要素(例:同じ部署のメンバー、同じ種類のタスク)を、同じグループとして認識しやすいように、目立たない線で囲んだり、背景色を付けたりすることも、「共通運命」(同じように扱われる要素はグループと認識されるゲシュタルト原則)と組み合わせた連続性の活用と言えます。
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なぜ良いのか: 要素と要素の関係性や時間の流れが視覚的に分かりやすくなります。矢印が明確な「連続」の指示となり、読者は迷うことなく情報を追うことができます。複雑な組織やプロセスも、視線の誘導によって整理された印象になります。
例3:Webサイトの一部やLPでCTA(行動喚起)へ誘導する
ユーザーの視線を最終的な目標(問い合わせボタン、購入ボタンなど)へ導くために使われます。
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適用方法:
- 製品の特徴→メリット→お客様の声→CTAボタン、というように、情報ブロックを配置する際に、視線が下方向や右下方向へ自然に流れるように配置します。
- 例えば、メリット部分のテキストやアイコンを、CTAボタンに向けて少しずつサイズを大きくしたり、矢印のアイコンを複数配置して方向を示したりします。
- CTAボタン自体のデザインも、周りの要素から浮かび上がりつつ、これまでの流れの「終着点」であることが視覚的に伝わるようにします(これは「コントラスト」の原則も関わります)。
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なぜ良いのか: ユーザーは無意識のうちにデザインされた「流れ」に乗せられ、最終的にたどり着くべき場所(CTA)へスムーズに到達しやすくなります。情報の流れが途中で途切れたり、あちこちに視線がさまよったりするのを防ぎ、離脱率の低下に繋がる可能性があります。
実践的なヒントと注意点
- 無理に曲げない: 『連続』の原則は、あくまで「自然な」視線の流れを作ることが目的です。不自然に要素を配置したり、無理な曲線で繋いだりすると、かえって視覚的なノイズになり、分かりにくくなることがあります。
- 「なぜ?」を意識する: なぜこの配置にするのか? 読者にどう見てほしいのか? という目的を明確にすることで、連続性を生かす方法が見えてきます。
- 他の原則と組み合わせる: 『連続』の原則は、「近接(関連するものは近くに置く)」「整列(要素を揃える)」「反復(同じ要素を繰り返す)」といった他のデザイン原則と組み合わせて使うことで、より効果を発揮します。例えば、同じ種類の要素(写真、見出し、本文)を連続して配置し、かつそれらをきっちり整列させることで、見やすく統一感のあるデザインになります。
- シンプルに始める: 最初から複雑な構成を考える必要はありません。まずは、箇条書きの先頭に同じ形の記号を使う、図解で矢印を必ず入れる、といった簡単なことから始めてみましょう。
デザイナーとの連携に活かす
デザインの『連続』の原則を理解していると、デザイナーとのコミュニケーションもスムーズになります。例えば、「この資料の情報の流れが分かりにくいと感じています。特にこのステップから次のステップへの視線誘導が自然になるように、連続の原則を意識して調整いただくことは可能でしょうか?」のように具体的に伝えることができます。
ゲシュタルト原則には「連続」の他にも、関連するものを近くに置くとグループに見える「近接」、同じようなものはグループに見える「類同」などがあります。これらの基本的な考え方を理解していると、デザイナーからの説明もより深く理解できるようになります。
まとめ
デザインの『連続』の原則は、単に見た目を整えるだけでなく、情報を伝える「道筋」を作るための強力なツールです。要素を線や方向に沿って配置することで、読者の視線を意図した方向へ自然に誘導し、伝えたい情報をスムーズかつ効果的に届けることができます。
SNS投稿、資料作成、広告バナーなど、日々の業務でデザインに関わる際に、ぜひこの『連続』の原則を思い出してみてください。情報の流れを意識して要素を配置するだけで、あなたの作成するビジュアルは、より分かりやすく、見る人にストレスを与えない、洗練されたものへと変わっていくはずです。難しく考えず、まずは「どうしたらこの情報をスムーズに読んでもらえるかな?」という視点で、要素の配置を工夫することから始めてみてはいかがでしょうか。