ごちゃつく資料やWebページをスッキリ!デザインの『グリッドシステム』やさしく解説【非デザイナー向け】
デザインの世界では、目に留まる美しいものだけでなく、情報を正確に、効率的に伝えるための工夫がたくさん凝らされています。資料作成やWebサイトの更新、SNS投稿などで「なんだかごちゃごちゃしている」「どこに何を置けばいいか分からない」と感じることはありませんか?
実は、プロのデザイナーが情報を整理し、美しく見せるために共通して活用している基本的な「仕組み」があります。それが「グリッドシステム」という考え方です。
このグリッドシステムを少し理解するだけで、あなたの作る資料やWebページ、SNS投稿が見違えるように整然とし、伝えたい情報がスッと伝わるようになります。
この記事では、デザインの専門知識がない方でも理解できるように、グリッドシステムとは何か、なぜ重要なのか、そしてどのように活用できるのかを、具体的な例を交えながらやさしく解説いたします。
グリッドシステムとは?「見えない基準線」を想像してみましょう
グリッドシステムとは、デザインを行う際に要素(テキスト、画像、ボタンなど)を配置するための「見えない基準線」のことです。まるで方眼紙やノートの罫線のようなものをイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。
ただし、デザインにおけるグリッドは、単なる等間隔の線だけではありません。以下のような要素で構成されます。
- カラム(Columns): 垂直方向の区切りです。新聞や雑誌の段組みをイメージすると分かりやすいでしょう。Webサイトでは、画面をいくつかの縦の領域に分割する際によく使われます(例:2カラム、3カラムレイアウト)。
- ロウ(Rows): 水平方向の区切りです。
- ガター(Gutters): カラムとカラムの間、あるいはロウとロウの間の「隙間」です。ここに余白が生まれます。
- マージン(Margins): レイアウト全体の外側の余白です。紙の端やブラウザウィンドウの端から内側への距離です。
これらの基準線によってできる升目や領域の中に、テキストや画像を配置していくというのがグリッドシステムの基本的な考え方です。
例えるなら、街の区画整理のようなものです。道路(グリッド線)によって区画(升目や領域)が生まれ、その区画の中に家やお店といった要素が建てられていきます。区画整理された街は、無秩序に建物が建ち並ぶよりも、整然としていて移動もしやすいですよね。デザインもそれと同じです。
なぜグリッドシステムが重要なのでしょうか?
グリッドシステムを意識することは、デザインの質を高める上で非常に重要です。主に以下のようなメリットがあります。
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見た目が整然とし、プロっぽい印象になる: 要素がバラバラに配置されていると、どうしても雑な印象を与えがちです。グリッドに沿って配置することで、全体に秩序が生まれ、洗練されたプロフェッショナルな見た目になります。これは信頼感にも繋がります。
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情報が整理され、理解しやすくなる: グリッドは、要素間の関係性やまとまりを視覚的に明確にしてくれます。例えば、同じカラム内に配置された情報は関連性が高い、といったルールを読み手に無意識のうちに伝えることができます。これにより、情報の構造が分かりやすくなり、伝えたいメッセージがより正確に届きます。
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制作の効率が上がる: どこに何を配置するか、迷う時間が格段に減ります。「この要素はこのカラムに入れる」「この画像の隣にはこの幅のテキストエリアを作る」といった明確な基準があるため、作業がスムーズに進みます。複数人で制作する場合でも、共通のグリッドルールがあれば統一感を保ちやすくなります。
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一貫性が生まれ、ブランドイメージを保ちやすくなる: 資料のページごと、あるいはWebサイトのページごとに異なるグリッドを使っていると、デザインに統一感がなくなり、散漫な印象を与えます。同じグリッドシステムを使うことで、どのページを見ても同じような安定感やリズムが生まれ、一貫したブランドイメージを構築できます。
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Webデザインにおける「レスポンシブ対応」に役立つ: 特にWebサイトの場合、パソコン、スマートフォン、タブレットなど、様々な画面サイズに対応する必要があります(これをレスポンシブデザインと呼びます)。グリッドシステムに基づいてレイアウトを設計しておくと、画面サイズが変わったときに、各カラムの幅や配置を調整するだけで、デザインの破綻を防ぎながら見やすいレイアウトを維持しやすくなります。
グリッドシステムをどう活用する?具体的な例
非デザイナーの方が日常業務でグリッドシステムを意識する際に、難しく考える必要はありません。まずは大まかな「基準線」を意識することから始めましょう。
例1:プレゼン資料や社内文書
プレゼン資料やPowerPoint、Wordなどの文書作成ツールでもグリッドの考え方は非常に役立ちます。
- 左右のマージンを決める: まずは左右に一定の余白(マージン)を設けます。これにより、画面や紙の端まで情報が詰め込まれず、読みやすくなります。
- コンテンツエリアを分割する(カラムを意識する): メインのコンテンツエリアを、例えば左右の2つのカラムに分割することを考えます。左カラムに画像、右カラムに説明テキスト、といった配置の基準ができます。あるいは、3カラムにして、真ん中にメイン情報、左右に補足情報や関連画像を置く、といった使い方もできます。
- (イメージ)
+---------------------------------------------+ | マージン | コンテンツエリア | マージン | | | +---------+ +-----------------+ | | | | | 画像 | | テキスト(右) | | | | | | (左) | | | | | | | +---------+ +-----------------+ | | | +-------------------------------------+ | +---------------------------------------------+
- (イメージ)
- 要素間の隙間(ガター)を揃える: カラムとカラムの間や、見出しと本文の間、箇条書きの各項目間など、要素と要素の間の隙間をできるだけ一定にします。これにより、視覚的なリズムが生まれ、整然と見えます。
例2:SNS投稿画像や広告バナー
正方形や長方形の画像の中で、テキストや画像を配置する際にもグリッドは有効です。
- 画像を分割して配置基準を作る: 画像を縦横に分割する「三分割法」は、構図の原則としても有名ですが、これもグリッドの一種と言えます。交点や分割線上に重要な要素(商品、ロゴ、キャッチコピーなど)を配置することで、バランスが取れ、視線を集めやすくなります。
- (イメージ)画像を縦横に3分割した「井」のような線を想像し、その線や交点を基準に要素を置く。
- テキストエリアを確保する: 画像の上にテキストを重ねる場合、テキストを配置するエリアの幅や位置をグリッドで決めます。例えば、画像の右側に一定幅のテキストエリアを設ける、下から何割かの位置に帯状のテキストエリアを置く、といった基準です。画像の重要な部分を隠さないように、配置するエリアをあらかじめグリッドで決めておくと便利です。
例3:簡易的なWebページのレイアウト検討
本格的なWebサイトデザインは専門的ですが、簡単なページ構造を考えるだけでもグリッドは役立ちます。
- ページの全体構造をブロックで考える: ヘッダー、メインコンテンツ、サイドバー、フッターといった大まかなブロックを、グリッド上の特定の領域に配置することを考えます。
- (イメージ)
+---------------------------------------------+ | ヘッダー | +---------------------------------------------+ | サイドバー(左) | メインコンテンツ | +------------------+--------------------------+ | フッター | +---------------------------------------------+
この場合、ヘッダーとフッターは横いっぱいの1カラム、その下のエリアは左にサイドバー(1カラム)、右にメインコンテンツ(複数カラム)といったグリッド構成を想定できます。
- (イメージ)
今すぐ試せる!グリッドシステム活用のためのヒント
- まずは「揃える」ことから意識する: 難解なグリッド理論を学ぶ前に、まずはデザインツールや資料作成ツールの「ガイド」や「ルーラー」機能を使って、要素の端を揃える、要素間の余白(ガター)を揃えることから始めましょう。これだけでも驚くほど整然と見えます。
- 既存の良いデザインを観察する: 日頃目にするWebサイト、雑誌、広告などで、「このデザイン、なぜ見やすいんだろう?」と感じたものがあれば、どんな「見えない線」に沿って要素が配置されているか想像してみてください。左右の余白は?カラム数はいくつくらいに見える?
- 大まかなグリッドから試す: 最初から複雑なグリッドを作る必要はありません。まずは画面や用紙を縦に3分割(3カラム)、または4分割(4カラム)することを意識してみましょう。その分割線や升目を基準に要素を置いてみるだけでも、配置の迷いが減ります。
- 「余白」とセットで考える: グリッドシステムは、要素だけでなく余白(ガター、マージン、負の空間)をデザインする上でも非常に重要です。グリッドによって定義された領域に適切に余白を設けることで、要素が引き立ち、情報が呼吸できるようになります。
デザイナーとの連携に役立つ視点
グリッドシステムは、デザイナーとのコミュニケーションにおいても共通言語となり得ます。
例えば、デザイナーから「今回は12カラムのグリッドで設計しています」「このエリアはグリッドに合わせて画像を配置してください」といった指示があった場合、グリッドシステムの概念を理解していれば、その意図をスムーズに把握できます。
また、あなたがデザイナーにデザインの修正指示やフィードバックを行う際に、「この部分の左右の余白を、他の要素の余白に合わせて少し広げてもらえませんか?」(=ガターやマージンを揃える)といった具体的な表現ができるようになります。これは、単に「なんとなくバランスが悪い」と言うよりも、はるかに的確で建設的なコミュニケーションに繋がるはずです。
まとめ
デザインの『グリッドシステム』は、一見難しそうに思えるかもしれませんが、要は「情報を配置するための見えない基準線」です。この基準線を意識するだけで、あなたの作る資料やWebページ、SNS投稿は、ごちゃつきが解消され、整然としてプロフェッショナルな見た目に変わります。
グリッドシステムは、見た目の美しさだけでなく、情報の伝わりやすさ、制作効率、そして一貫性の確保といった、ビジネスシーンでデザインを活用する上で非常に重要な役割を果たします。
今日から、あなたが何かをデザインする際に、画面や用紙の中に「見えない基準線」を引いてみることを意識してみてください。きっと、要素の配置に迷うことが減り、整然とした、より伝わるデザインに近づくことができるはずです。
グリッドシステムを少しずつ理解し、実践に取り入れていくことで、あなたのデザインスキルは着実に向上していくでしょう。ぜひ、試してみてください。