重要な情報がすぐ伝わる!デザインの『階層(ヒエラルキー)』やさしく解説【SNS・資料編】
はじめに:なぜあなたの資料や投稿は「分かりにくい」と言われるのか?
日々の業務で、SNS投稿画像や広告バナー、社内向けのプレゼン資料など、ビジュアルを作成したり、その指示を出したりすることが多いかと思います。時間をかけて作ったのに、「結局何が言いたいの?」「どこを見ればいいか迷う」と言われた経験はありませんか?
これは、決してあなたの作成スキルが低いからではありません。多くの場合、情報が詰め込まれすぎているか、あるいは「情報の重要度」が視覚的に伝わりにくくなっていることが原因です。
私たちは、たくさんの情報に囲まれて暮らしています。特にオンライン上では、一瞬で理解できるかどうかが重要になります。デザインにおける重要な原則の一つに「階層(ヒエラルキー)」という考え方があります。これを理解し、活用することで、あなたの作成物が見違えるほど分かりやすくなり、伝えたい情報が読者にスッと届くようになります。
この記事では、デザインの専門知識がない方でも理解できるように、「階層」とは何か、なぜそれが必要なのか、そして具体的な業務(SNSや資料作成)でどのように活用できるのかを、やさしく解説していきます。
「階層(ヒエラルキー)」とは何か?デザインにおける役割
デザインにおける「階層(ヒエラルキー)」とは、情報に優先順位をつけ、その重要度に応じて見た目の差をつけることです。これにより、読み手は無意識のうちに「何が最も重要か」「次に何を見るべきか」を判断できるようになります。
専門的には「ビジュアルヒエラルキー」と呼ばれることもありますが、難しく考える必要はありません。これは、私たちが日常的に目にしている様々なものに応用されている考え方です。
例えば、新聞を想像してみてください。 * 最も重要なニュースは、一番大きな文字の見出しで書かれています。 * 次に重要なニュースは、中くらいの文字の見出しです。 * 本文はそれより小さな文字で書かれています。 * 写真や図表は、記事の内容を補足するために配置されています。
このように、文字の大きさや太さ、配置などによって、どの情報が一番重要で、次にどれを読めばいいのかが自然と分かるようになっています。これがデザインにおける「階層」の考え方です。
階層が必要な理由はシンプルです。
- 読み手の負担を減らす: 膨大な情報の中から、重要なものを探す手間を省きます。
- 情報伝達効率を上げる: 伝えたいメッセージが速く、正確に伝わります。
- 分かりやすさ、プロっぽさを生む: 情報が整理され、見た目がすっきりするため、洗練された印象を与えます。
階層が明確でないデザインは、情報の「重要度」が全て同じに見えてしまい、読み手はどこから見れば良いのか、何が一番大切なのかを判断できず、混乱したり、読むのを諦めてしまったりする可能性が高くなります。
どうやって「階層」を作るのか?具体的な方法
では、具体的にどのような要素を使って「階層」を作ることができるのでしょうか?特別なツールや難しい技術は必要ありません。あなたが普段使っているツールで、これらの要素を意識するだけで、見違えるほど階層が明確になります。
主に、以下の要素を組み合わせて階層を作ります。
- 文字のサイズ:
- 一番伝えたいメッセージは、最も大きなサイズにします。
- 次に重要な情報は、それより少し小さくします。
- 本文や補足情報は、さらに小さなサイズにします。
- なぜ? 人間の目は、大きなものほど重要だと認識しやすいからです。
- 文字の太さ(ウェイト):
- 強調したい見出しやキーワードは、太字にします。
- 本文は通常の太さにします。
- なぜ? 太い文字は細い文字よりも視覚的なインパクトが強く、目につきやすいからです。
- 色:
- 最も重要な要素に、他の要素とは異なる、目立つ色を使うことで、注意を引きます。
- 関連性の高い情報を同じ色にすることで、グループ分けを示唆することもできます。
- なぜ? 特定の色は無意識に注意を向けさせる効果があり、情報の識別を助けます。
- 配置と余白:
- 重要な情報を、読者の視線が自然に移動する場所(例えば左上など)に配置します。
- 関連する情報の塊を、適切な余白で区切ることで、情報のまとまりと重要度を示します。(「余白」については別の記事でも詳しく解説しています)
- なぜ? 視線は特定のパターンで移動し、余白は情報間の関係性や重要度を暗黙的に伝えます。
- その他の要素(下線、枠線、背景色など):
- 見出しに下線を引いたり、重要な情報の背景色を変えたり、枠線で囲んだりすることで、他の情報との区別を明確にし、重要度を際立たせます。
- なぜ? 他の情報と視覚的に差別化することで、その要素の重要性を強調できます。
これらの要素を単独で使うのではなく、組み合わせて使うことで、より効果的な階層を作ることができます。例えば、最も重要な見出しは「大きく」「太く」「目立つ色」にする、といった具合です。
実践!SNS投稿や資料での階層の作り方
それでは、実際に非デザイナーの皆さんが日常的に関わるシーンで、どのように階層を取り入れることができるかを見てみましょう。
例1:SNS投稿画像や広告バナー
SNSのタイムラインは情報で溢れています。ユーザーはほんの一瞬で投稿を見るかスキップするかを判断します。ここで階層が重要になります。
-
Before(階層が不明確な例):
- セール情報のバナー。商品画像の上に、キャッチコピー、割引率、期間、店舗名、URLなどが全て同じくらいの文字サイズ、同じ色、同じ太さで並んでいます。
- 読者:「えーと、何の情報だっけ?どこが一番大事?」と混乱し、結局スルー。
-
After(階層を意識した例):
- 最も伝えたいこと(キャッチコピー): 例「GW限定!全品20%OFFセール開催!」
- → 最大級の文字サイズで、太字にし、背景色と対照的な色(コントラスト)で配置。
- 次に伝えたいこと(商品名や具体的なメリット、期間): 例「人気家電も対象」「5月1日(水)〜5月7日(火)まで」
- → キャッチコピーよりは小さいが、本文よりは大きいサイズで配置。太字にする箇所としない箇所でメリハリをつける。
- 詳細情報(店舗名、URL、注意事項など): 例「〇〇オンラインストアにて」「※一部対象外商品あり」
- → 最も小さな文字サイズで、目立たせすぎない色(背景色に近い色など)で配置。
- 商品画像: 中央や分かりやすい場所に配置し、キャッチコピーとの関連性が分かるようにする。
- 全体: 各情報ブロックの間に適切な余白を設けて、それぞれのまとまりを分かりやすくする。
- 最も伝えたいこと(キャッチコピー): 例「GW限定!全品20%OFFセール開催!」
このように階層を作ることで、ユーザーは一目で「何に関する情報か」「一番のメリットは何か」「いつまで開催しているのか」といった重要な情報を素早く掴むことができます。
例2:プレゼン資料や社内資料
プレゼン資料や社内向けの報告書なども、情報を整理し、相手に分かりやすく伝えることが目的です。ここでも階層は非常に役立ちます。
-
Before(階層が不明確な例):
- 箇条書きが多く、全て同じ文字サイズ、同じ太さ。どこが重要な項目か、どこからどこまでが一つの話題なのかが分かりにくい。
- 図やグラフのタイトルが小さすぎて、何を示しているのかすぐには分からない。
- スライドタイトルと本文の差があまりない。
-
After(階層を意識した例):
- スライドタイトル: スライド中で最も大きな文字サイズで配置。太字や目立つ色を使うこともある。
- 章の見出し: スライドタイトルよりは小さいが、次の項目の見出しよりは大きいサイズにする。
- 項目の見出し: 本文より少し大きく、太字にする。
- 本文: 標準的な文字サイズと太さにする。
- 重要なキーワードやフレーズ: 本文中でも特に伝えたい部分は、太字や色を変えて強調する。
- 箇条書き: 各項目の開始位置を揃える(整列)。項目間に少し余白を設けて、まとまりを分かりやすくする。
- 図表のタイトル: 図表のすぐ上に、本文よりやや大きい文字サイズで配置。
- 補足情報や出典: 最も小さな文字サイズで、スライドの下部などに配置。
このように階層を意識することで、プレゼンの聞き手や資料の読み手は、スライド全体で何が話されているのか(タイトル)、今の話は何についてか(見出し)、そしてその中の最も重要なポイントは何か(太字や色)をスムーズに理解できるようになります。
デザイナーとの連携に役立つ視点
もしあなたがデザイナーにデザインを依頼する場合や、上がってきたデザインに対してフィードバックする場合、「階層」の考え方を知っていることは非常に有効です。
例えば、デザイン案を見て「ちょっと情報がごちゃついて見えるな…」と感じたとします。その時、「もう少し階層を明確にしてもらえませんか?特にこのキャッチコピーと商品情報の重要度を区別したいです」といった具体的な言葉で伝えることができます。
「この部分をもっと目立たせてください」「ここからここまでは一つのまとまりとして見せたいです」といった要望も、階層を作るための具体的な指示になります。単に「なんか分かりにくい」と伝えるよりも、デザインの意図や改善点をデザイナーと共有しやすくなり、よりスムーズなコミュニケーションと、より良い成果物につながります。
まとめ:今日から「情報の重要度」を意識してみましょう
この記事では、デザインの「階層(ヒエラルキー)」について、非デザイナーの方向けにやさしく解説しました。
階層とは、情報の重要度に応じて見た目に差をつけ、読み手がスムーズに内容を理解できるようにするためのデザイン原則です。文字サイズ、太さ、色、配置、余白などを使い分けることで作ることができます。
SNS投稿やプレゼン資料、その他のビジネスドキュメントを作成する際には、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。
- このデザインで、一番伝えたい情報は何だろう?
- 次に伝えたい情報は何だろう?
- どの情報が一番重要に見えているだろうか?
- 情報のまとまりは分かりやすいだろうか?
これらの問いに答えることで、自然と階層を意識したデザインに近づけるはずです。
初めは難しく感じるかもしれませんが、まずは「一番重要なものだけ、他のものより少し大きく、太くしてみる」といった簡単なことから始めてみましょう。小さな一歩でも、情報の伝わりやすさは大きく変わります。
デザインの知識は、特別な人だけのものではありません。少しの意識と工夫で、あなたの仕事の質は必ず向上します。この「階層」の考え方を、ぜひ今日からの業務に取り入れてみてください。応援しています。