「動き」で魅せる!デザインの『モーション』やさしく解説【SNS・プレゼン編】
日々、SNS投稿やプレゼン資料を作成する中で、静的なビジュアルだけでは伝えきれない物足りなさを感じたり、「もっと目を引くようにしたい」「情報をもっとスムーズに伝えたい」と思ったりすることはありませんでしょうか。
実は、ちょっとした「動き」を取り入れるだけで、メッセージの伝わりやすさや見る人の関心度が大きく変わることがあります。これはデザインの世界で「モーション」や「アニメーション」と呼ばれる要素の力です。
この「動き」は、単なる飾りや派手な演出ではありません。適切に使うことで、情報を分かりやすく整理したり、見る人の注意を意図した場所に向けたり、感情に訴えかけたりすることができる、デザインの重要な原則の一つなのです。
このブログ記事では、デザインの専門知識がない方でも、日常業務(特にSNS投稿やプレゼン資料作成)に活かせるよう、「モーション」の基本的な考え方と、具体的な活用方法をやさしく解説いたします。
デザインにおける「動き」(モーション)とは?
デザインにおける「動き」(モーション)とは、視覚的な要素が時間とともに変化することを指します。写真やイラストのような静止した状態ではなく、要素が現れたり消えたり、移動したり、形や色を変えたりする、その「過程」そのものです。
Webサイトのボタンにカーソルを合わせたときの色変化、プレゼン資料で箇条書きの項目が一つずつ現れる演出、SNS動画でテロップが流れる様子などが、身近なモーションデザインの例と言えるでしょう。
これらは、単に見た目を面白くするためだけに行われるのではありません。そこには、情報をより効果的に伝えたり、ユーザーの操作を助けたりする明確な意図があります。
なぜ「動き」は効果的なのか?その理由を解説
では、なぜデザインに「動き」を取り入れることが効果的なのでしょうか。主に以下の理由が挙げられます。
1. 注目を集める
人間は、静止しているものよりも動いているものに本能的に注意を向けやすい性質があります。たくさんの情報が並ぶSNSのタイムラインや、多くの人が同時に見ているプレゼン画面の中で、適切に動きを取り入れた要素は、自然と人の目を引きつけます。
例えば、SNSで動画広告を見たとき、最初に商品の画像だけが表示されるより、商品が画面内で少し回転したり、キャッチコピーがアニメーションで表示されたりする方が、つい見てしまう、という経験はありませんでしょうか。これは、動きが視覚的な「フック」として機能しているからです。
2. 情報を分かりやすく伝える
複雑な情報や変化の過程を示す際に、「動き」は非常に役立ちます。
例えば、プレゼン資料でグラフの変化を説明する場合、最終的なグラフだけを見せるのではなく、時間経過に合わせて棒グラフが伸びていく様子をアニメーションで見せると、データがどのように変化したのかが直感的に理解しやすくなります。
また、操作手順の説明などで、要素がどのように変化し、次に何が起こるのかを動きで示すことで、見る人はスムーズに情報を追うことができます。静止画の連続では分かりにくい点の繋がりや関連性を、動きが補ってくれるのです。
3. 情報を整理し、重要度を示す(視覚的な階層)
画面上の要素が一度に全て表示されるのではなく、重要な情報から順番に、あるいは関連するグループごとに動きを伴って現れるようにすると、情報の整理や理解が促されます。
例えば、プレゼン資料の箇条書きで、話し手の説明に合わせて項目が一つずつフェードイン(じわっと現れる)するようにすると、見る人は今話されている点に集中できます。全ての項目が最初から表示されていると、どこに注目すれば良いか迷ったり、先の情報を先に読んでしまったりすることがありますが、動きが視線の誘導を助け、情報の階層(重要度や表示順序)を自然に示すのです。
4. 感情や雰囲気を伝える
動きの速さ、軌道、タイミングなどによって、デザイン全体の印象や伝えたい感情をコントロールすることも可能です。
- 素早く、直線的な動き:活発、緊急、テクノロジー
- ゆっくりと、滑らかな動き:落ち着き、優雅、信頼
- 弾むような、不規則な動き:楽しさ、遊び心、親しみやすさ
といったように、動き方一つで受け取る印象は変わります。ブランドイメージや伝えたいメッセージに合わせて、動きの質を工夫することが重要です。
非デザイナーのための「動き」の活用術:SNS・プレゼン資料での実践例
それでは、これらの原則を踏まえて、非デザイナーの方が日常業務でどのように「動き」を取り入れられるか、具体的な例を見ていきましょう。
SNS投稿(短い動画・GIF)での活用
静止画投稿に比べて、動画やGIFは目を引きやすく、伝えられる情報量も増えます。しかし、動画制作はハードルが高いと感じるかもしれません。ここでは、手軽に使えるツール(Canvaなど)でも実現可能な、シンプルな動きの活用例です。
- テキストアニメーション:
- キャッチコピーを数秒かけてゆっくりとフェードイン(じわっと現れる)させる。
- 重要なキーワードを少し大きくなってから元のサイズに戻るようにする(拡大・縮小アニメーション)。
- 効果: 読むべき箇所に注意を向けさせ、読み飛ばしを防ぎます。単調なテキスト表示に比べて、見る人の関心を惹きつけます。
- 要素の出現アニメーション:
- 商品画像、グラフ、アイコンなどを画面端からスライドイン(滑り込んでくる)させる。
- 要素がポンと弾むように現れる。
- 効果: 画面にリズムが生まれ、見る人を飽きさせません。情報の登場に期待感を持たせたり、構成要素の関連性を示唆したりできます。
- 装飾的な動き:
- 背景にゆったりと動く図形やパーティクル(小さな点々)を配置する。
- 写真にズームイン/アウトの動きを加える。
- 効果: 視覚的な豊かさを加え、雰囲気を演出します。ただし、主役の情報より目立たないように注意が必要です。
【実践のヒント】 まずはテキストの表示方法や、画面を切り替える際(スライドインなど)に簡単なアニメーションを使ってみるのがおすすめです。見る人が追いきれないほど速すぎたり、逆に遅すぎてイライラさせたりしないよう、適切な時間調整が重要です。
プレゼン資料での活用
PowerPointやKeynoteには様々なアニメーション機能があります。これらを効果的に使うことで、資料の内容理解を深め、聴衆の集中を維持することができます。
- 箇条書きの段階表示:
- 話す内容に合わせて、箇条書きの項目を一つずつ表示させる(フェードイン、ワイプなど)。
- 効果: 聴衆が今話している内容に集中できます。全ての項目が表示されていると、聴衆が先を読んでしまい、話し手のペースが崩れるのを防ぎます。
- 図やグラフの変化・構成要素の表示:
- 複雑な図解を、構成要素ごとに段階的に表示させる。
- データの説明に合わせて、グラフの棒や線が伸びていく様子を見せる。
- 効果: 図やグラフがどのように成り立っているか、データがどのように変化したのかを順序立てて理解させることができます。特に変化を示すグラフでは絶大な効果を発揮します。
- スライド遷移:
- スライドが切り替わる際に、派手すぎないスムーズなアニメーションを使う(フェード、プッシュなど)。
- 効果: プレゼンの流れをスムーズにし、次のスライドへの期待感を自然に高めます。ただし、毎回違うアニメーションを使ったり、複雑すぎるものを選んだりすると逆効果になります。統一感が大切です。
【実践のヒント】 PowerPointなどの「アニメーション」タブにある機能を使います。ポイントは「何のためにこの動きを入れるのか?」を考えることです。目的なく「なんとなく動かす」のは避けましょう。「情報を追わせる」「変化を示す」「区切りを分かりやすくする」といった目的を明確にすることで、使うべきアニメーションが見えてきます。
「使いすぎ」は禁物!適切な「動き」を選ぶために
モーションデザインは強力なツールですが、適切に使わないと逆効果になります。非デザイナーの方が陥りがちなのが「せっかくだからたくさん動かそう」という考えです。
- 過剰なアニメーション: 要素がガチャガチャ動きすぎたり、派手なアニメーションを多用したりすると、見る人は情報に集中できず、かえって疲れてしまいます。また、デザインが安っぽく見えてしまうこともあります。
- 目的のない動き: ただ動かせば良いわけではありません。「なぜこの要素を動かすのか?」「この動きで何を伝えたいのか?」という目的がない動きは、ノイズになります。
- 速度やタイミングの不適切さ: 表示が速すぎて読めない、遅すぎて待たされる、といった動きはストレスを与えます。見る人のペースを考慮した速度設定が必要です。
「控えめであること」「目的に合っていること」「統一感があること」を意識しましょう。まずはシンプルな動きから取り入れ、徐々に慣れていくのがおすすめです。
デザイナーとの連携に役立つ視点
もしデザイナーにSNS動画やプレゼン資料のデザインを依頼する場合、今回の「動き」に関する基本的な理解が役立ちます。
「ここにこの文字をフェードインさせてください」といった具体的な指示も良いですが、「このグラフのデータの変化を分かりやすく見せたいので、何か動きで工夫できませんか?」とか、「このメッセージを一番最初に注目してほしいので、一番印象に残るような動きをお願いします」のように、「なぜそうしたいのか(目的)」や「実現したい効果」を伝える方が、デザイナーは意図を汲み取りやすく、より良い提案をしてくれる可能性が高まります。
また、「フェードイン」「スライドイン」「ズーム」「ワイプ」など、基本的なアニメーションの名称を知っておくと、コミュニケーションがスムーズになります。
まとめ
デザインにおける「動き」(モーション)は、単なる視覚的な楽しさを加えるだけでなく、情報を分かりやすく伝え、見る人の関心を惹きつけ、理解を助けるための重要なデザイン原則です。
- 動きは注目を集め、
- 情報の変化や過程を分かりやすく示し、
- 情報の階層や順序を自然に伝え、
- デザインの感情や雰囲気を演出します。
SNS投稿やプレゼン資料において、目的を持って、控えめに、そして統一感を持って動きを取り入れることで、あなたのメッセージは格段に伝わりやすくなるはずです。
今日から、あなたが作るビジュアルに、ほんの少しの「動き」を意識して取り入れてみませんか? きっと、その効果に驚かれることでしょう。