資料・SNSの写真をもっと効果的に!デザインの『トリミングとレタッチ基本』やさしく解説【非デザイナー向け】
日頃、SNSに投稿する画像を作成したり、プレゼン資料や社内資料に写真素材を使用したりする機会は多いことと思います。
「せっかく良い写真を選んだのに、なんだか垢抜けない」 「伝えたい情報と写真のイメージが少しずれている気がする」
もしそう感じることがあるなら、それは「トリミング」や「簡単なレタッチ」の視点が欠けているからかもしれません。
トリミングやレタッチと聞くと、専門的な画像編集ソフトを使う難しい作業のように思われるかもしれませんが、実は普段お使いのツール(PowerPoint、Canva、スマートフォンの写真アプリなど)でできる範囲でも、写真の見え方や情報伝達力は劇的に変わります。
この記事では、デザインの専門知識がない方でもすぐに実践できるよう、写真の『トリミング』と『簡単なレタッチ』の基本的な考え方と、なぜそれが効果的なのかを分かりやすく解説いたします。
トリミングとは? 不要な部分を切り落とすだけではない、写真の「編集」作業
トリミングとは、写真の一部を切り取って使用することです。単に写真のサイズを調整するだけでなく、写真に写っている要素や構図を調整し、伝えたい情報をより明確にするための重要なデザイン工程です。
なぜトリミングが重要なのでしょうか?
写真には、主題となる被写体の他にも、背景や周辺に様々な情報が写り込んでいます。これらの情報が必要なものばかりとは限りません。時には、主題から注意をそらしたり、写真全体の雰囲気を損ねたりすることもあります。
トリミングを行うことで、以下のような効果が得られます。
- 主題の明確化: 不要な要素を排除し、見てほしいものに焦点を当てることができます。写真の中で「何が一番重要か」を際立たせます。
- 視線の誘導: 構図を調整することで、見る人の視線を自然に誘導し、意図した順番で情報を見てもらうことができます。
- 構図の改善: 例えば、被写体が写真の真ん中にありすぎると単調に見える場合があります。少し左右にずらす(三分割法などの考え方を取り入れる)ことで、写真に動きや奥行きが生まれます。
- 写真の印象の変化: 同じ写真でも、トリミングの仕方によって、広がりを感じさせたり、緊迫感を出したり、雰囲気を大きく変えることができます。
- 使用する媒体への最適化: SNSの投稿画像、Webサイトのバナー、プレゼン資料のスライドなど、それぞれ適した形(アスペクト比)に合わせて写真を調整します。
具体的なトリミングのテクニック例
- 被写体に「寄る」: 人物の写真なら顔の表情がよく見えるように、商品の写真なら商品のディテールが伝わるように、思い切って被写体に近づけてトリミングします。
- 不要な背景をカット: 主題とは関係のない、雑然とした背景や映り込みを切り落とすことで、写真がスッキリし、主題が引き立ちます。
- 水平・垂直を正す: 少し傾いている写真を水平・垂直に直すだけで、安定感が増し、見やすい写真になります。建物の写真や地平線・水平線が写っている写真で特に有効です。
- 三分割法を意識: 写真を縦横三分割した線の交点や線上に主題や重要な要素を配置すると、バランスの良い、視線が誘導されやすい構図になります。パワポやCanvaのトリミング機能には、この分割線を表示できるものもあります。
- アスペクト比の調整: SNSのストーリーズなら縦長、Facebookのフィードなら正方形や横長など、掲載場所に合わせた形に調整します。
トリミングは、写真の「引き算」の作業と言えます。写真から何を「取り除くか」を考えることで、写真の「伝えたいこと」がより明確になります。
レタッチとは? 写真に「一手間」加えて魅力を引き出す作業
レタッチとは、写真の明るさ、コントラスト、色合いなどを調整する作業です。難しく聞こえるかもしれませんが、スマートフォンの写真編集機能や、PowerPoint、Canvaなどのツールに備わっている簡単な調整機能を使うだけでも十分効果があります。
なぜ簡単なレタッチが重要なのでしょうか?
カメラやスマートフォンの設定、撮影時の光の加減によって、写真は必ずしも理想的な状態で撮れるわけではありません。また、写真単体としては良くても、デザイン全体のトーンに合わないこともあります。
簡単なレタッチを行うことで、以下のような効果が得られます。
- 情報の見やすさ向上: 暗すぎてディテールが見えない部分を明るくしたり、コントラストを高めてメリハリをつけたりすることで、写真がより見やすく、伝わりやすくなります。
- 写真の印象・感情の調整: 少し温かみのある色合いにすることで穏やかな雰囲気にしたり、彩度を上げて鮮やかにすることで活気を出したりと、写真が持つ印象や見る人に与える感情をコントロールできます。
- デザイン全体との調和: 資料やSNS投稿、Webサイトなど、デザイン全体のカラーテーマやトーンに合わせて写真の色合いを調整することで、統一感が生まれ、よりプロフェッショナルな印象になります。
- 色かぶりの補正: 照明の色(電球色など)によって写真全体が黄色っぽくなっている「色かぶり」を補正し、被写体の色をより自然な状態に戻すことができます。
具体的な簡単なレタッチのテクニック例
- 明るさとコントラストの調整: スライダーを左右に動かして、写真が暗すぎたり明るすぎたりしないか調整します。コントラストを上げると写真がくっきりしますが、上げすぎると白飛び・黒つぶれするので注意が必要です。
- 彩度(色の鮮やかさ)の調整: 料理や商品の写真をより美味しそうに、魅力的に見せたい場合は彩度を少し上げます。ただし、上げすぎると不自然になるため、控えめにするのがポイントです。落ち着いた雰囲気にしたい場合は彩度を少し下げることもあります。
- 色温度(温かみ・冷たさ)の調整: 写真が青っぽい場合は少し暖色に、黄色っぽい場合は少し寒色に寄せることで、自然な見た目に近づけます。暖かさやクールさを意図的に強調したい場合にも使えます。
- シャープネスの調整: 写真が少しぼやけている場合に適用すると、輪郭がはっきりして見やすくなります。これもかけすぎるとノイズが出て不自然になります。
レタッチは、写真の「足し算」や「調整」の作業と言えます。写真が本来持っている魅力を引き出したり、デザインの目的に合わせて調整したりするために行います。
デザイナーとの連携に活かす視点
写真のトリミングや簡単なレタッチの基本を知っておくと、デザイン業務を依頼する際にデザイナーとのコミュニケーションがスムーズになります。
例えば、写真素材についてデザイナーからフィードバックをもらった際に、「この写真、少し色温度が高いですね」「もう少し主題に絞ったトリミングの方が良いかもしれません」といった具体的な言葉の意味が理解できるようになります。
また、こちらからデザイナーに要望を伝える際も、「この写真、全体的に少し暗いので明るさを調整してもらえませんか」「この人物写真、顔をもっと大きく見せたいので、余白部分を多めにトリミングしてください」のように、具体的かつ的確な指示を出すことが可能になります。
デザイン原則の理解は、単に自分でデザインできるようになるだけでなく、専門家であるデザイナーと効果的に連携するための共通言語を身につけることにも繋がるのです。
まとめ:写真の「一手間」が、デザインの質を高める
この記事では、写真の『トリミング』と『簡単なレタッチ』という、二つの基本的な写真編集の概念について解説しました。
- トリミングは、写真の不要な部分を切り落とし、主題を明確にし、構図を調整して伝える情報を整理・強調する作業です。
- レタッチは、写真の明るさや色合いを調整し、視認性を高め、写真の魅力や意図する雰囲気を調整する作業です。
これらは高度なスキルが必要な専門作業ではなく、普段お使いのツールで誰でも試せる身近なテクニックです。たったこれだけの一手間を加えるだけで、いつものSNS投稿画像や、プレゼン資料の写真が、驚くほど見違えるはずです。
ぜひ、次回の写真を使うデザイン制作の際に、ここでご紹介したトリミングと簡単なレタッチの視点を思い出してみてください。少し意識するだけで、あなたのデザインがさらに洗練され、伝えたい情報がより多くの人に響くようになるでしょう。