デザイン原則やさしく解説

意図通りに読ませる!デザインの『視線誘導』の基本【SNS・資料・広告編】

Tags: 視線誘導, デザイン原則, 非デザイナー, レイアウト, コミュニケーション, 資料作成, 広告クリエイティブ

デザインの世界には、見る人の視線を特定の方向に自然と導くための考え方があります。これを「視線誘導」と呼びます。SNSの投稿画像、プレゼン資料、ウェブサイトのバナーなど、私たちが日常的に目にする多くのビジュアルは、この視線誘導を意識して作られています。

非デザイナーの皆様が、ご自身の作成物で「どこを最初に見てもらい、次にどこを見てほしいか」をコントロールできるようになることは、情報を効果的に伝える上で非常に重要です。

この記事では、デザインにおける視線誘導の基本的な考え方と、それを実現するための具体的な方法を、専門用語を避けながら分かりやすく解説します。

デザインの『視線誘導』とは?

視線誘導とは、デザインされた情報を見る人が、無意識のうちに特定の順番で要素を追いかけるように仕向けることです。人間の目は、一般的に特定のパターンで動く傾向があります。

例えば、私たちは文字を読むとき、多くの場合左上からスタートして右下に向かって目線を動かします。これは、日本語や英語のように左から右、上から下に読む習慣があるためです。また、大きな要素や色のついた目立つ要素に先に目が行き、次に周囲の小さな情報へと移る傾向もあります。

デザインにおける視線誘導は、このような目の動きの習慣や、目立つ要素とそうでない要素の関係性を活用して、「伝えたい情報」を「伝えたい順番」で見てもらうための技術です。これにより、情報が正しく、効率的に伝わります。

なぜ視線誘導が重要なのか?

デザインにおいて視線誘導が重要である理由はいくつかあります。

視線誘導をデザインで操る基本的なテクニック

では、具体的にどのようにして視線を誘導するのでしょうか。いくつかの基本的なテクニックをご紹介します。

1. 要素の「配置」で流れを作る

人間は情報を処理する際に、無意識のうちに一定の順序で要素を追います。この傾向を利用して、情報の配置を決めます。

2. サイズの大小で注目度を変える

大きい要素は、小さい要素よりも先に視線を引きつけます。最も伝えたい情報や重要な要素は、他の要素よりも大きく表示しましょう。

3. 色やコントラストで視線を引く

特定の色や、周囲とのコントラストが強い要素は、視線を引きつけます。

4. フォントの種類や太さ、スタイルを変える

フォントのサイズだけでなく、種類、太さ、斜体などのスタイルを変えることでも、視線を誘導できます。

5. 図形、線、矢印などで流れを示す

線や図形、矢印などは、文字通り視線の流れを直接的に示すことができます。

6. 余白を効果的に使う

要素の周りに十分な余白があると、その要素が浮き上がって見え、視線が集まりやすくなります。「余白」は単なる空白ではなく、要素を引き立て、視線の通り道を確保する役割を果たします。重要な情報や画像、CTAボタンの周囲には、適度な余白を設けることを意識しましょう。

7. 写真やイラストの「視線」を利用する

写真に人物が写っている場合、その人物がどこを見ているかによって、見る人の視線も無意識のうちに誘導されます。人物が特定の方向や要素を見ている写真を使うと、読者の視線もそちらへ向かいやすくなります。

具体的な適用例

これらのテクニックを、日々の業務でどのように活かせるか、具体的な例を見てみましょう。

例1:SNS投稿画像

あなたが新しいセミナーの告知画像をデザインするとします。画像内に含める情報として「セミナータイトル」「開催日時」「登壇者」「申し込みはこちら」があるとします。

  1. 最重要情報: まず「セミナータイトル」を一番大きく、目立つ場所に配置します。例えば、画像の上部または中央です。
  2. 次に重要な情報: 開催日時や登壇者情報はその下に配置します。これらはタイトルよりは小さいですが、読みやすいサイズにします。
  3. 最終的な行動: 「申し込みはこちら」のボタンは、他の情報から少し離して、目立つ色とサイズで配置します。必要であれば、このボタンへ誘導する小さな矢印や線を入れることも考えられます。
  4. 視線誘導: これらを配置する際、例えば左上にタイトル、中央にメインビジュアル、右下に申し込みボタン、といったZのような流れを意識すると、自然な視線の流れを作れます。

例2:プレゼン資料のスライド

商品サービスの強みを説明するスライドを作成するとします。伝えたい情報は「課題」「解決策(あなたのサービス)」「導入メリット」「お客様の声」です。

  1. スライドタイトル: まずスライドのタイトルに目が行くように、一番上の目立つ場所に配置します。
  2. 流れに沿って配置: 「課題」を左上、「解決策」をその右か下、「導入メリット」をさらに下、最後に「お客様の声」を配置するなど、論理的な情報の流れに合わせて視線が動くように要素を配置します。
  3. 強調: 最も伝えたい「解決策」の箇所を囲む枠線をつけたり、強調したい数字やキーワードを太字や色付きにしたりします。
  4. グラフ/図: 複雑な情報を図やグラフで示す場合は、それ自体が視線を引くので、中心的な配置を検討し、図解の後ろに解説文を配置するなど、見る順序を明確にします。

例3:広告バナー

新しいキャンペーンを告知する広告バナーを作成するとします。要素は「キャッチコピー」「キャンペーン内容の簡潔な説明」「商品やサービスの画像」「今すぐチェック!ボタン」です。

  1. キャッチコピー: 何よりもまず伝えたいキャッチコピーを、バナー内で最も大きく、コントラストが強い色で配置します。
  2. 画像: 商品やサービスの魅力的な画像を、キャッチコピーの近くや、視線の流れの邪魔にならない位置に配置します。
  3. 詳細: キャンペーン内容の簡潔な説明を、キャッチコピーよりは小さいが読みやすいサイズで配置します。
  4. CTA: 「今すぐチェック!」ボタンは、他の要素と明確に区別できる色とサイズで、クリックしやすい位置(例: 右下)に配置し、視線が自然にそこへ向かうように全体の要素を調整します。

デザイナーとの連携に役立つ視点

視線誘導の考え方を理解していると、デザイナーの方とのコミュニケーションがスムーズになります。例えば、「このキャッチコピーにまず目が行くように」「このボタンを一番クリックしてほしいので、そこへ視線が誘導されるように調整できますか?」といった具体的な要望を伝えることができます。

単に「もっと目立つようにしてください」と言うのではなく、「なぜ目立たせたいのか(最初に見てほしいから)」や「どのように視線を誘導したいのか(タイトルからボタンへ)」という意図を伝えられるようになるため、より的確なフィードバックや指示が可能になり、イメージ通りのデザインを実現しやすくなります。

まとめ

デザインにおける視線誘導は、情報を伝える上で非常にパワフルなツールです。見る人の目の動きの習慣を理解し、配置、サイズ、色、フォント、図形、余白といったデザイン要素を意識的に使うことで、あなたが意図した通りに情報を届け、読者に適切な行動を促すことができます。

今回ご紹介したテクニックは基本的なものですが、これらを意識するだけでも、SNS投稿、プレゼン資料、広告クリエイティブといった日々の制作物の伝わり方は大きく変わるはずです。

すぐに全てを完璧にする必要はありません。まずは、次に何かビジュアルを作る際に、「見る人の目はどこからどこへ動くだろう?」と少しだけ立ち止まって考えてみてください。その小さな意識の変化が、あなたのデザインをより効果的なものへと導く第一歩となるでしょう。

ぜひ、あなたのデザイン制作に視線誘導の考え方を取り入れてみてください。