デザイン原則やさしく解説

資料やSNS投稿の「読みやすさ」が変わる!デザインの『文字組み』やさしく解説【非デザイナー向け】

Tags: デザイン原則, タイポグラフィ, 文字組み, 資料作成, 読みやすさ

読まれるデザインは「文字」が違う?非デザイナーのための『文字組み』入門

日頃、社内資料やプレゼン資料、SNSの投稿画像やバナーなど、様々なビジュアルを作成したり、ディレクションしたりする機会があるかと思います。

デザインを作る際、「どんな写真を使うか」「どんな色にするか」といった要素に目が行きがちですが、実は「文字」の扱い方がデザイン全体の印象や、情報の伝わりやすさを大きく左右します。

特に、文字の大きさや種類だけでなく、「文字と文字の間」「行と行の間」「段落と段落の間」といった「スペース」の調整、つまり「文字組み」は、読みやすさに直結する非常に重要なデザイン原則の一つです。

この「文字組み」は、ちょっと意識するだけで、あなたの作るビジュアルの質をぐっと高めることができます。この記事では、難しく考えがちな「文字組み」の基本を、非デザイナーの方向けに分かりやすく解説します。

「文字組み」とは一体何でしょうか?

デザインにおける「文字組み」とは、単に文字を並べるだけでなく、文字や文章全体が読みやすく、美しく見えるように、文字と文字の間隔、行と行の間隔、段落と段落の間隔などを調整する技術のことです。

これはまるで、家を建てる時に、ただ材料を積むのではなく、柱と柱の間隔、部屋と部屋の配置、窓の大きさなどを考えて、快適で丈夫な家にする作業に似ています。文字も同じで、適切に間隔を調整することで、情報が頭に入ってきやすくなり、文章全体の印象も変わります。

デザイナーは、文字組みを意識することで、読み手がストレスなく内容を理解できるように、文章の「呼吸」をデザインしています。

では、具体的にどのような要素があるのか見ていきましょう。

文字組みの重要要素1:行間(リーディング)

「行間」とは、文章の一行と次の行のベースライン(文字が並ぶ基準線)の間隔のことです。デザインの世界では「リーディング」と呼ばれることもあります。

なぜ行間が重要なのか?

行間が適切に取られていると、読み手の視線がスムーズに次の行へ移動できます。逆に、行間が狭すぎると、文字がぎっしり詰まって見え、どこを読んでいるのか分からなくなったり、前の行と次の行が混ざって見えたりして、読むのが苦痛になります。まるで満員電車のように、息苦しく感じてしまいます。

一方で、行間が広すぎると、文章がバラバラに見えてしまい、一つのまとまりとして認識しにくくなります。これは、情報が途切れ途切れに入ってくるような感覚です。

適切な行間は、文章全体を一つのまとまりとして見せつつ、各行の文字が重ならず、視線が自然に流れるように調整することで、読みやすさを格段に向上させます。

適切な行間の目安

一般的に、本文の行間は文字サイズの1.5倍から2倍程度が良いとされています。ただし、これはあくまで目安です。

WordやPowerPoint、Canvaでの調整イメージ

これらのツールには、行間を設定する機能があります。「行間オプション」などで、「1.5行」「倍数」「固定値」などを選んで調整できます。最初は文字サイズの1.5倍~2倍を目安に調整してみて、実際に画面や印刷物を見て読みやすいと感じる間隔を探してみてください。

文字組みの重要要素2:文字間(カーニング・トラッキング)

「文字間」とは、文字と文字の間のスペースのことです。これには主に二つの考え方があります。

なぜ文字間が重要なのか?

文字間が狭すぎると、文字がくっつきすぎて読みにくく、圧迫感が出てしまいます。逆に広すぎると、文字がバラバラになり、単語として認識しにくくなります。まるで、文字がばらけて情報が頭に入ってこないような状態です。

適切な文字間は、単語や文章が自然なまとまりに見え、読みやすくなるだけでなく、デザイン全体の美しさやプロフェッショナルな印象に繋がります。特に見出しやロゴタイプなど、少ない文字で強い印象を与えたい場合には、カーニングによる微調整が非常に効果を発揮します。

具体的な調整例

多くのデザインツールでは、「文字間」や「字送り」といった項目でトラッキングの調整が可能です。カーニングは、より専門的なツール(Adobe Illustrator, InDesignなど)で細かく設定できますが、PowerPointやCanvaでも基本的な文字間の調整は可能です。まずはトラッキングで全体の文字間を調整することから始めてみましょう。

文字組みの重要要素3:段落間のスペース

「段落間のスペース」とは、一つの段落の終わりと次の段落の始まりの間に取るスペースのことです。

なぜ段落間のスペースが重要なのか?

段落間のスペースは、文章の中で話題が変わる区切りを示し、読み手が情報を整理しやすくするために非常に重要です。このスペースがないと、複数の段落がごちゃ混ぜに見え、どこからどこまでが一つの話題なのかが分かりにくくなります。

適切な段落間のスペースは、行間よりも少し広く取るのが一般的です。これにより、読み手は自然に段落の変わり目を認識し、情報をブロックごとに理解することができます。

調整のポイント

PowerPointやWordでは、段落設定のオプションで「段落前」「段落後」のスペースを設定できます。Canvaなどでも、テキストボックス間のスペースや、リストの項目間のスペースなどを調整できます。

その他の文字組みに関する言葉(参考)

他にも、文字組みには以下のような専門的なルールや言葉があります。

これらは通常ソフトが自動で行ってくれますので、非デザイナーの方は「そういうルールがあるんだな」程度に知っておくことで十分です。

実践!あなたのデザインに文字組みを活かす

ここまで解説した文字組みの原則を、日頃の業務にどのように活かせるか考えてみましょう。

デザイナーに指示する際のヒント

もしあなたがデザイナーにデザインを依頼する場合、文字組みの基本を知っていると、より具体的で的確なフィードバックや指示が出せるようになります。

このように、具体的な言葉で意図を伝えることで、デザイナーとの認識のずれが減り、よりスムーズに希望のデザインに近づけることができます。

まとめ:文字組みを意識するだけで、デザインは見違える

デザインにおける「文字組み」は、一見地味な作業に思えるかもしれません。しかし、行間、文字間、段落間のスペースを少し調整するだけで、作成する資料やSNS投稿の「読みやすさ」と「見た目の印象」は劇的に向上します。

読みやすいデザインは、それだけで情報が正確に伝わり、信頼感を醸成し、目的達成(読了、行動など)に繋がります。

デザインの専門知識がない方も、今回ご紹介した「行間」「文字間」「段落間のスペース」の三つを意識して、今作っているビジュアルを見直してみてください。きっと、驚くほど違いを感じられるはずです。

難解なデザイン原則も、一つずつ理解して実践に取り入れていくことで、あなたのビジネスコミュニケーションはより効果的なものになるでしょう。ぜひ、文字組みの調整から始めてみてください。