迷わない!資料やSNS投稿に最適なフォントの組み合わせ術【非デザイナー向け】
デザインにおいて、文字(フォント)選びは情報の伝達力や全体の印象を大きく左右する要素です。特に、複数のフォントを組み合わせて使う「フォントペアリング」は、デザインに深みとプロフェッショナルな雰囲気を与える反面、「どのフォントとどのフォントを組み合わせれば良いのか分からない」と悩む非デザイナーの方も多いのではないでしょうか。
この疑問に答えるために、この記事ではフォントペアリングの基本的な考え方と、非デザイナーの方がすぐに実践できる組み合わせのコツを、分かりやすく解説します。SNS投稿、プレゼン資料、社内文書など、日々の業務でデザインに関わる際にぜひお役立てください。
フォントペアリングとは? なぜ重要なのでしょうか?
フォントペアリングとは、見出し、本文、キャプションなど、デザインの中で異なる役割を持つテキストに対して、複数のフォントを組み合わせて使用することです。
なぜフォントペアリングが重要かというと、主に以下の3つの理由があります。
- 情報の階層を明確にする: 見出しと本文で異なるフォントを使うことで、「これは重要な見出し」「これは詳細な本文」という情報の役割や重要度を視覚的に区別できます。これにより、読者はどこから読み始めれば良いか、何が重要かを直感的に把握しやすくなります。
- デザインに個性と表情を与える: フォントにはそれぞれ異なる個性があります。堅実な印象を与えるもの、親しみやすいもの、エレガントなものなど、フォントの組み合わせ方によって、デザイン全体の雰囲気や伝えたいメッセージをコントロールすることができます。
- 退屈さをなくし、視覚的な興味を引く: 全て同じフォントでデザインされたものは、単調になりがちです。適切なフォントペアリングは、デザインに変化とリズムを生み出し、読者の興味を引きつけ、最後まで読んでもらいやすくします。
単に文字を表示するだけでなく、フォントの組み合わせを工夫することで、より効果的に情報を伝え、魅力的なデザインを作ることができるのです。
フォントを組み合わせるための基本的な考え方
フォントペアリングの基本的な考え方は、以下の2つです。
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コントラストをつける(違いを出す):
- 見た目の印象が異なるフォントを組み合わせる方法です。例えば、力強い見出し用のフォントと、読みやすい本文用のフォントを組み合わせることで、視覚的なメリハリが生まれます。
- 具体的には、「明朝体」と「ゴシック体」の組み合わせが代表的です。明朝体は線の強弱があり縦線が強調される傾向があり、伝統的、上品、知的な印象を与えることが多いです。一方、ゴシック体は線が均一で太く、力強くモダン、視認性が高いという特徴があります。この2つを組み合わせることで、互いの特徴を引き立て合い、見出しと本文の区別をはっきりさせることができます。(例:見出しをゴシック体、本文を明朝体など)
- その他にも、「セリフ体」と「サンセリフ体」の組み合わせもこれにあたります。「セリフ体」は文字の線の端に「セリフ」と呼ばれる飾りがある書体(例:Times New Romanなど)で、伝統的で格式張った印象です。日本の明朝体に近い性質を持ちます。「サンセリフ体」はセリフがない書体(例:Arial, Helveticaなど)で、モダンでシンプル、視認性が高いという特徴があります。日本のゴシック体に近い性質を持ちます。
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親和性を持たせる(共通点を見つける):
- 全くバラバラなフォントではなく、どこかに共通点や調和する要素を持つフォントを組み合わせる方法です。例えば、同じデザイナーが作ったフォントファミリーの中から、太さやスタイルの異なるものを選ぶ、あるいは雰囲気が似ているフォント同士を選ぶといった方法です。
- 具体的には、同じフォントファミリー内の異なるウェイト(太さ)やスタイル(斜体など)を組み合わせる方法です。例えば、あるゴシック体の「Bold(太字)」を見出しに使い、「Regular(標準)」を本文に使うなどです。これは最も失敗しにくい安全な組み合わせ方でありながら、しっかりとした階層表現が可能です。
- また、異なるフォント同士でも、骨格(文字の基本的な形)が似ているものや、同じ時代・雰囲気を持つものを選ぶことで、自然な組み合わせになります。
この「コントラスト」と「親和性」のバランスが重要です。全く似ていないフォントを組み合わせるとデザインがバラバラに見えますし、逆に似すぎているとメリハリがなく退屈な印象になります。
実践!具体的な組み合わせ例とNG例
非デザイナーの方がSNS投稿や資料作成で使いやすい具体的な組み合わせ例をご紹介します。
例1:最も定番で失敗しにくい組み合わせ
- 見出し: 力強いゴシック体(例:角ゴシックBold)
- 本文: 標準的なゴシック体(例:角ゴシックRegular)
- ポイント: 同じフォントファミリー内で太さだけを変える方法です。非常に視認性が高く、資料や広告バナーなど、素早く情報を伝えたい場面に最適です。デザインに統一感があり、どんな内容にも馴染みやすい組み合わせです。
例2:上品さや信頼感を出したい場合の組み合わせ
- 見出し: 太めのゴシック体(例:丸ゴシックまたは角ゴシックBold)
- 本文: 明朝体(例:リュウミンRegular, UD黎ミンRegularなど)
- ポイント: ゴシック体の視認性の高さと、明朝体の上品さ・信頼感を組み合わせた例です。雑誌の記事や企業のWebサイト、少しフォーマルな資料などに合います。ただし、小さな文字で明朝体を使うと潰れて読みにくくなる場合があるので注意が必要です。本文はUD(ユニバーサルデザイン)フォントなど、読みやすさを考慮した明朝体を選ぶとより良いでしょう。
例3:親しみやすく、少し柔らかい印象の組み合わせ
- 見出し: 丸ゴシック体(例:UD新丸ゴBoldなど)
- 本文: 標準的なゴシック体(例:UD新ゴRegularなど)
- ポイント: 丸ゴシック体の柔らかい印象と、標準的なゴシック体の視認性の高さを組み合わせます。SNSの投稿や、ターゲット層が若い場合の資料、親しみやすい雰囲気を演出したい場合に適しています。
NG例:避けたい組み合わせ
- 似ている雰囲気のフォントを複数使う: 例えば、非常に個性の強い装飾的なフォントを2つ以上使うと、互いが主張しすぎてしまい、ごちゃごちゃした読みにくいデザインになります。個性的なフォントは1つに絞り、他はシンプルなフォントで補完するようにしましょう。
- 同じ分類でも骨格が大きく違うフォント: 同じゴシック体でも、文字の太さの均一さ、丸み、横幅などが全く異なるフォントを組み合わせると、チグハグな印象になることがあります。可能であれば、同じシリーズやデザイナーのフォントを選ぶと安心です。
- 本文に装飾的なフォントを使う: 本文は長文になることが多いため、装飾が多すぎたり、線が細すぎたりするフォントは避けるべきです。読みやすさを最優先し、標準的なゴシック体や明朝体を使用しましょう。
迷ったら試したい!フォントペアリングの実践ステップ
- デザインの目的とターゲットを考える: 誰に向けて、どのような情報を伝えたいデザインですか? フォーマルなのか、カジュアルなのか、ターゲット層の年齢層などを考慮し、デザイン全体のトーンを決めます。これがフォント選びの最初のヒントになります。
- 主役となるフォントを選ぶ: まず、見出しやキャッチコピーなど、最も伝えたい部分に使う「主役」のフォントを1つ選びます。デザイン全体の雰囲気に合う、個性を表現できるフォントを選びましょう。
- 引き立て役のフォントを選ぶ: 次に、主役フォントを引き立て、本文などで使う「引き立て役」のフォントを選びます。主役フォントとの「コントラスト」と「親和性」を意識して選びます。
- コントラスト重視: 主役が明朝体ならゴシック体、セリフ体ならサンセリフ体など、見た目の分類が違うもの。ただし、雰囲気が極端に離れすぎていないか確認。
- 親和性重視: 主役と同じフォントファミリーの別の太さ、あるいは雰囲気が似ているもの。
- 実際に組み合わせて確認する: 選んだフォントを、見出しと本文のように実際に並べて表示してみてください。文字サイズ、行間、文字間も調整しながら、読みやすさ、雰囲気、そして違和感がないかを確認します。必要であれば、他の組み合わせもいくつか試してみましょう。
- 使用するフォントの種類を絞る: 初めは2種類程度のフォントから始めるのがおすすめです。多くても3種類程度に絞ることで、デザインに統一感が出てまとまりやすくなります。
最近では、Google Fontsなどの無料フォントサービスや、Adobe Fontsなどの有料サービスで、相性の良いフォントの組み合わせ例が紹介されていることもあります。そういった情報も参考にしながら、色々なフォントを試してみてください。
デザイナーとのコミュニケーションに役立つ視点
フォントペアリングの考え方を知っていると、デザイナーに指示を出したり、デザイナーからの提案を理解したりする際に役立ちます。
例えば、「この見出しは力強く目立たせたいので、ゴシック体の太字にしてもらえますか? 本文は読みやすさを重視して、クセのない明朝体でお願いします」のように、具体的なフォントの分類(ゴシック体、明朝体など)や太さ(ウェイト)の希望を伝えやすくなります。
また、デザイナーから提案されたフォントペアリングについて、「なぜこの組み合わせなのですか?」と理由を尋ねることで、デザイナーの意図やデザインの根拠を理解し、より建設的なフィードバックや連携が可能になります。
まとめ
デザインにおけるフォントペアリングは、単に文字を並べるのではなく、情報の重要度を明確にし、デザインに個性と読みやすさをもたらす重要な技術です。
非デザイナーの方でも、「コントラスト」と「親和性」という2つの基本的な考え方を理解し、定番の組み合わせ例を参考にしながら、実際に試してみることで、資料やSNS投稿のクオリティをぐっと向上させることができます。
まずは、今作っているデザインの目的やターゲットに合った「主役」と「引き立て役」のフォントを選び、実際に並べて確認してみてください。少し意識するだけで、あなたのデザインはもっと伝わりやすく、魅力的なものになるはずです。
ぜひ、この記事を参考に、フォントペアリングを楽しんでみてください。