デザイン原則やさしく解説

「なんだか良い感じ」の秘密!デザインの『構図』やさしく解説【黄金比・三分割法編】

Tags: 構図, 黄金比, 三分割法, 写真, レイアウト, デザイン原則

「なんだか良い感じ」のデザイン、その秘密は『構図』にあります

日々の業務でSNS投稿用の画像や広告バナー、プレゼン資料などを作成したり、その指示を出したりする機会は多いのではないでしょうか。一生懸命作っても、「なんだかバランスが悪い」「どこに目が行くか分からない」と感じたことはありませんか。一方で、プロが作ったものは、写真1枚でも、文字と画像が配置されたシンプルなものでも、「なんだか良い感じ」に見えます。

この「なんだか良い感じ」を生み出す要素の一つに『構図(こうず)』があります。構図とは、写真やイラスト、デザインなどの要素を画面の中にどのように配置するか、その配置の設計や構成のことです。家を建てる時の設計図のようなものだと考えると分かりやすいかもしれません。

デザインにおける構図は、単に見た目を良くするためだけでなく、伝えたい情報を効果的に届けたり、見る人の感情に訴えかけたりするために非常に重要な役割を果たします。

この記事では、デザイン初心者の方や非デザイナーのビジネスパーソンに向けて、構図の基本的な考え方と、特に有名で応用しやすい『黄金比(おうごんひ)』『三分割法(さんぶんかつほう)』という2つの原則を、専門用語を避けながらやさしく解説します。これらの原則を知ることで、あなたの作るデザインが見違えるヒントや、デザイナーとのコミュニケーションを円滑にするための視点が得られるはずです。

なぜ構図がデザインに重要なのか?

なぜ、私たちは構図を意識する必要があるのでしょうか。構図には、主に以下のような役割があります。

構図は、デザインの質を高め、伝えたいことをより効果的に伝えるための土台となる考え方なのです。

黄金比をやさしく解説

まず、『黄金比』について説明します。黄金比は、約1:1.618という比率のことです。この比率は、古くから人間が最も美しいと感じる比率の一つとされており、ピラミッドやパルテノン神殿のような歴史的建造物、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画、Appleのロゴや名刺のサイズなど、様々な場面で見られます。

なぜ黄金比が心地よいのか?

黄金比がなぜ多くの人に心地よく感じられるのか、明確な科学的根拠が一つに絞られているわけではありませんが、一説には自然界にこの比率が多く見られること(植物の葉のつき方や巻貝の螺旋など)から、人間の脳が自然と認識し、安定感や調和を感じるためと考えられています。

デザインへの応用例

黄金比は、レイアウトの比率を決めたり、要素のサイズや配置に迷ったときのヒントになります。

例えば、SNS広告のバナーを作成する際、画像エリアとテキストエリアの横幅の比率を黄金比(例えば、画像の幅が約61.8%、テキストの幅が約38.2%)に設定してみると、情報が整理されて見えるだけでなく、見た人にとって視覚的に心地よいバランスになります。

三分割法をやさしく解説

次に、『三分割法』について説明します。三分割法は、画面を縦横それぞれ3等分する2本の線を引き、合計9つのマス目と4つの交点を作る考え方です。このグリッド線(線を「グリッド」と呼びます)や交点を利用して、デザインの要素を配置します。

画面を縦横3等分した線やその交点を意識することで、バランスが崩れにくく、見る人の視線を自然に誘導しやすい構図を作りやすくなります。特に写真や映像の構図でよく使われる基本的な手法です。

なぜ三分割法が良いのか?

画面の中心に主要な要素を置くと、写真などはやや単調な印象になりがちです。一方、三分割法では、主要な被写体や伝えたい情報を画面の端に寄せすぎず、かといって真ん中にも置かない「少しずらした位置」(グリッド線の上や交点)に配置します。これにより、画面に程よい緊張感と動きが生まれ、見る人の視線が自然とその要素へと引きつけられます。また、残りの広いスペース(ネガティブスペースと呼ぶこともあります)が引き立て役となり、主要な要素が際立ちます。

デザインへの応用例

三分割法は、写真、プレゼン資料、Webサイトのヒーローイメージ(一番上の目立つ大きな画像)などのレイアウトで非常に役立ちます。

例えば、社内向けのプレゼン資料を作成する際に、伝えたい最も重要なグラフをスライドの中央ではなく、右下の交点の近くに配置してみましょう。そして、グラフのタイトルや簡単な解説を左上の交点付近に配置します。こうすることで、見る人の視線がスムーズに流れ、情報が段階的に伝わりやすくなります。

黄金比と三分割法、どう使い分ける?

黄金比と三分割法は、どちらもバランスの取れた構図を作るための原則ですが、それぞれ少し特徴が異なります。

どちらか一方だけを使う必要はありません。デザインの目的や、扱う要素の性質によって使い分けたり、組み合わせて活用したりすると良いでしょう。

今すぐできる!構図を意識したデザインの実践ヒント

デザインの専門知識がなくても、今日から構図を意識してデザインの質を向上させるための具体的なヒントをいくつかご紹介します。

  1. 写真を選ぶ際に構図を意識する: ストックフォトを探すときや、自分で写真を撮るときに、被写体が三分割法のグリッド線や交点に配置されているか、バランスが良いかなどを意識して選んでみましょう。
  2. 資料作成ソフトのガイド機能を活用する: PowerPointなどのプレゼン資料作成ソフトや、デザインツールには、オブジェクトを配置する際にガイド線が表示されたり、グリッドを表示する機能があったりします。これを活用して、要素の端を揃えたり、画面を分割する際に参考にしたりできます。(ただし、ソフトによっては三分割法の正確な線や交点ではない場合もあるので注意してください)
  3. バナー作成時は手元でラフを描いてみる: バナー作成ツールを使う前に、紙などに手書きで構図のラフを描いてみましょう。どこに画像、どこにタイトル、どこにボタンを置くか、大まかに画面を三分割してみるだけでも、バランスを考える助けになります。
  4. 既存の良いデザインを分析する: 「このSNS投稿、なんだか見やすいな」「この広告バナー、情報がスッと頭に入ってくるな」と感じたデザインがあったら、それがどのような構図になっているか観察してみましょう。三分割法のグリッドを頭の中で重ねてみたり、要素の比率を測ってみたりするのも勉強になります。

デザイナーとの連携に活かす

デザイン原則の理解は、デザイナーとのコミュニケーションにも役立ちます。例えば、デザイナーにバナー制作を依頼する際に、「サービスの特徴を伝えたいので、一番伝えたいキャッチコピーを三分割法の交点あたりに目立たせてほしい」「商品の写真は黄金比でトリミングして、より魅力的に見せたい」のように、具体的な意図や希望を「構図」という観点から伝えることができます。

「なんだか良い感じにしてほしい」という抽象的な依頼よりも、「情報を整理して、信頼感のあるバランスにしたいので、黄金比を意識したレイアウトを提案してほしい」のように伝える方が、デザイナーも意図を正確に理解しやすく、より質の高いアウトプットに繋がりやすくなります。

まとめ

この記事では、デザインの「なんだか良い感じ」を生み出す要素の一つである『構図』について、特に『黄金比』と『三分割法』という2つの原則をやさしく解説しました。

これらの原則は、決して「こうしなければならない」という厳格なルールではありません。しかし、知っていることで、デザインの意図を明確にし、より魅力的で効果的なビジュアルを作成するための強力な武器となります。

日々の業務でデザインに触れる際に、ぜひ「構図」の視点を取り入れてみてください。きっと、あなたの作るものが「なんだか良い感じ」に変わっていくのを実感できるはずです。

デザイン原則をやさしく学び、一緒にデザインの力を高めていきましょう。